11章

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「美優起きて、美優」 梨花?さっき蓮の声が聞こえたよ…… 「蓮はどこ?」 突然出てきた名前で梨花と高杉くんが目が合い、梨花は顔をひきつり苦笑いをする。 「蓮って誰?」 「蓮?誰だろうね。美優寝ぼけてるよね」 「さっきも俺をそう呼んだんだよ」 「この子ったらすぐ映画とかにのめり込んじゃうからそっちの人じゃない」 我ながら痛い言い訳だね。 「井上の彼氏?」 高杉くん、頼むからそれ以上私に聞かないで。私なんて答えていいか困る。 「だから違うっ」 「蓮……まだ眠いよ」 美優いい加減にしないとね、その口押さえるよ。 「たぶん……美優の想い人かも」 「俺の知ってる奴?」 「さあ、それはわからないな」 高杉くんお願いだからもう何も言わないで。 「美優、ほら部屋戻るよ」 「う……ん」 寒い。なんでさっきから顔に風が当たるの?身を縮めていた私はゆっくり目を開けると空高くにまん丸な月がある。 「えっ?」 慌てて体を起こし、辺りを見渡すとそこは外で私の下には木の板が…… これはベンチ椅子? 「どうして私ここにいるの?」 「お前酔ってたんだよ」 「た、高杉くん」 私の後ろには仁王立ちの高杉くんとその後ろで苦笑いの梨花がいて…… 「美優、酔っちゃって高杉くんが介抱してくれたみたいだよ」 恐る恐る高杉くんを見ると目を細めて睨む高杉くんがいて、私は怖くなりベンチの上に正座をした。 「高杉くんごめんなさい」 と頭を下げた。 「お前な。弱いんだから酒飲むな」 「は、はい」 「俺じゃなかったら今頃部屋に連れ込まれてたぞ」 自分の犯した失敗に高杉くんの言葉で、またしてもやってしまったことと、高杉くんじゃなかったら……と考えると大変なことになっていて…… 「高杉くんほんとにごめん」 私は顔の前に掌を重ね深々と謝った。
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