11章

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「もういいよ。早く部屋に帰れよ」 「高杉くん、このお詫びはいつかするから」 「じゃあさ、社員旅行終わったら飲みに行こう」 「うん?誰と?」 「お前と俺に決まってるだろう」 「梨花は?」 「じゃ、私も連れて行ってよ」 梨花は嬉しそうに自分に指を差し、私も私もって騒いでいる。 「お前はだめ」 「なんでよ」 「これは今日のお詫びで井上が俺のために付き合うから。で、井上の奢りな」 「そ、そんな私お金まで出すの?」 二人きりはちょっと……蓮になんて説明すればいいのか。 「高杉くんそれは」 「いいよな」 強制的な強い口調で言われてしまい私は断れず、うんと言ってしまった。 「よし、じゃあ連絡するわ」 「た、高杉くん……」 ニカッと笑った高杉くんは右手を軽く振り踵を返して帰ってしまった。 「美優。高杉くんはいい奴だけど気をつけなよ」 「え、それってどういう意味?」 「ほんと美優は鈍感」 「ひどい。私鈍感じゃないよ。」 高杉くんはほんとにいい人。頼れるし、とにかく周りをよく見てて気が利く人だよ。 気をつけなよってそれは高杉くんに対して失礼だよ。 高杉くんの良さを梨花は理解してないんだから。 口を尖らせてブツブツと文句を言いながら部屋へ向かう途中、東京では見られないような無数の夜空の星が私の足を止めせていた。
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