12章

2/11
前へ
/549ページ
次へ
私にとって何をしに来たのかわからない社員旅行は無事に終わり、もう東京に着いてしまった。 バスに乗るとお疲れの梨花はずっと爆睡で、私は眠れず窓から見える景色を見ていた。 たまに聞こえる三浦さんの声が耳に障り、なるべく聞かないように気を紛らせてiPodを聴いていた。 「美優真っ直ぐ帰るの?」 私が帰る場所は蓮のマンション。それしかないのだ。こんな時、同棲というものが嫌だと思ってしまう。 「う……ん。帰るかな?」 「何その疑問形?」 梨花に昨夜のことを何も話していなくて…… バスの中で話そうと思っていたけど梨花が寝ちゃって話せなかった。 「はははっ、帰るよ」 「そっか。じゃ明日祭日だから、明後日会社でね」 「うん、じゃあね」 実家に帰る?それもなんだか帰りずらい…… どうしても今日は蓮と顔を合わせたくない。 でも他に帰る場所がない。 「はあ……」 足は痛いし、鞄は重いし、しかも今にも雨が降りそう。いやなことばかり。 100m先にスタバの看板を見つけた。 スタバにでも寄ってコーヒー飲んで帰ろうかな。 「そうだ。そうしよう」 少しでも時間を稼いでから帰れば蓮と一緒にいる時間を減らせる。 私は足をかばいながらスタバへ向かった。 蓮からの電話も気付かずに……
/549ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23658人が本棚に入れています
本棚に追加