12章

3/11
前へ
/549ページ
次へ
すでに一時間はいるだろうか…… ちゃっかり途中で雑誌まで買ってつい夢中になっちゃって、コーヒーはもう空になっていた。 「そろそろ限界かな」 雑誌を捲りながら片方の手でバックから携帯を探し当てると、蓮からの着信が2件入っていた。しかもメールもきていて…… 『連絡して』 とたったの4文字。 逃げられないと思った私は『もうちょっとしたら帰ります』と返信した。 テーブルに携帯を置こうとしたら突然携帯が震え慌ててボタンを押すと…… 『今どこ?』 名前を確認しなかった私が悪い。蓮からの電話だった。 「会社の近くのスタバでちょっとコーヒーを……」 『迎えに行くからそこにいて』 それは困る。もう少しここで和ませて。 「買い物して帰るから迎えに」 ツーツーツー 切られてしまった。どうせ掛け直しても蓮は絶対出ない。だから諦めて待つしかない。 蓮の声は無愛想でトーンが低かった。 きっとかなり怒ってる。でも待って。 何に怒ってるの? 部屋に高杉くんがいたから?旅館で電話に出なかったから?今寄り道したから? 自分でも何がなんだかわからなくなってきた。 空は厚い雲に覆われていて今にも雨が降りそう。 そろそろ蓮が来るはずだと思い外に出てきた。 その時、黒の車がハザードを付けて停まった。蓮だ。 私は荷物を持って近寄ると蓮が車から降りて来て、何も言わず私の手から荷物を奪った。 「え?」 思わず蓮の態度に声を出していた。また昨日のように私を見ようとせず、明らかに無視。 トランクに荷物を入れると、さっさと運転席に乗ってしまった。
/549ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23658人が本棚に入れています
本棚に追加