12章

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どうしてそこまで無視するの? 怒りたいのは……私だよ。 それなのに…… 一言ぐらいなんか言ってくれてもいいのに。 街中にいるっていうのに私はもうすでに涙腺が緩みだし、肩を揺らしてバカみたいに泣いていた。 なかなか乗らない私に腹が立ったのか車から出てきた蓮は、突然泣いている私に驚いて 「美優」 と久しぶりに私の名前を呼んだ。 でもね、昨日からずっと無視されている私は傷付いてたんだよ。 三浦さんのこともあって追い討ち掛けられて苦しかったんだよ。 蓮なんにもわかってくれない。 私の気持ちなんてどうでもいんだね。 「もうこんなのいやだ」 私はたまらなく苦しくなって、この場から立ち去りたくて、蓮を置いたまま走って逃げた。 「美優!」 きっと小学校の徒競走以来の走りだと思う。そのぐらい猛スピードで…… 信号が変わった同時に蓮と逆の道路に逃げ込んだ。 蓮は車だからこっちには来れないはず。 ビルとビルの間に身を潜めると頬に冷たい雨が落ちてきた。 「雨……」 雨が降って丁度よかった。 だって泣いても雨と混ざってバレないから。しゃがみ込んだ私は雨音に混じって声を出して泣いていた。 苦しい恋なんて誰も望まないのにどうして人は恋をすると苦しくなるんだろう。 いつも笑っていたいのに好きになればなるほど心が痛くて切なくなる。 私はこんなに蓮が好きなのに…… どうして泣いてばかりなんだろう……
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