12章

7/11
前へ
/549ページ
次へ
ソファの右側は私の特等席。いつものように体育座りをして、蓮がお風呂から上がるのを待っていた。 数十分後、首にバスタオルを巻いた蓮が出てきて、冷蔵庫を開けてペットボトルを飲み干した。 体の向きを変えたと同時に私は視線を逸らし、俯いていた。 それは目を合わせるのが怖かったから…… 私の左側に座った蓮は拳を掌で包み一点を見つめたままで…… 張り詰めた緊張感が心臓をドキドキさせていた。 「あのさ……」 沈黙を先に破ったのは蓮で、突然声を掛けられた私は体がビクっとなってしまった。 「あ、うん……」 「どうして……高杉が部屋にいたの?」 蓮は…… 三浦さんのことじゃなく高杉くんのことを聞いてきた。 そっか…… 三浦さんのこと……話すつもりはないんだね。 二人を見て逃げ出した途中転んで、高杉くんが手当してくれて、元はというと二人が抱き合っているのを見たからで。 私の口からは……言えない。 言葉を詰まらせながら、 「転んじゃって高杉くんが手当してくれて……」 「だからって部屋に入れたの?」 欠片も感じられない冷たい目。 棘が突き刺さったみたいに胸が痛い。 「私が転んで怪我をしたから助けてくれただけだよ!蓮だって三浦さんと」 あっ、と思った時にはすでに遅く、二人の名前が出てしまっていた。 私の言葉に蓮の眉が微かに動いた。
/549ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23658人が本棚に入れています
本棚に追加