12章

8/11
前へ
/549ページ
次へ
「……蓮は三浦さんと抱き合ってたじゃない!」 ハッと目を見開き視線を落とした蓮は、 「見てたのか……」 と、厳しい表情で呟いた。 私は攻め込まれ、声を張り上げてしまっていた。 だって、高杉くんは助けてくれただけだよ。それ以上何かあった訳じゃないんだよ。それなのに蓮は抱き合ってた。 それを私ばかり責めるから私は声を上げていた。 「蓮と三浦さんを偶然見ちゃって……逃げる途中転んだの……偶然そこに高杉くんがいて血だらけだった私を助けてくれたの……」 蓮はまだ血が滲んでいる膝に目を移し、目を細めた。 「何も知らないで怒って……ごめん。痛たかったよな」 そう言って眉間に眉を寄せて切なげな顔で私の膝に触れた。 「どうして三浦さんと……」 もういてもたってもいられなかった。私の口は蓮を追い込んでいく。 「三浦が……課長と不倫してて……三浦妊娠してるんだ」 「え……」 「それを知ったのはその時で、課長が離婚をするって言ったのに奥さんも妊娠したみたいで……」 「そんな……」 「課長が別れてくれって……でも三浦は産みたいって。俺……母子家庭なんだ。親父の顔知らないで育った。だからかな。三浦に……同情してた」 そんなことがあったなんて…… 「隠してて悪かった」 私は何度も首を横に振り、 「私……何も知らないで……蓮を責めてた……」 「最初から言わなかった俺が悪い」 違う。蓮は悪くない。私が勝手に怒って不安になって…… 三浦さんにそんなことが起きてたなんて知らなくて…… 「ごめん……なさい」 私がポロポロと涙を流すと、蓮の手が頭に伸びてきて 「美優は謝ることないんだよ」 そう言って優しく頭を撫でてくれた。
/549ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23658人が本棚に入れています
本棚に追加