12章

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汗がまだ額に滲む蓮は、私のおでこにチュッとリップ音を鳴らして、私から離れて横にうつ伏せになった。 まだ落ち着かない呼吸を整えていると 「美優?」 「うん?」 「俺さ。家族って憧れるんだよね」 さっき蓮は母子家庭だと言っていた。私の知らない蓮の家族のこと。いつか聞ける時がきたら聞いてみようと思っていた。 「奥さんがいて子供がいて、毎朝一緒に食卓囲んで……なんかそれだけでも憧れる」 「うん……」 「小さい時、うちの母親は朝から晩まで働いて、俺はいつも一人だった。参観日も来ないし、仕事が休めない時は運動会も来なかった。でもさ、俺のために頑張ってたからもんくも言わないでさ。寂しいのに寂しいって言えなくなってた。甘えることを知らないまま大人になってたんだよな」 「蓮……」 「でも美優といて寂しい気持ちもなくなって。俺……美優には甘えられるんだ」 胸が熱くなって涙が溢れ出ていた。 何不自由なく育った自分があまりにも未熟で…… 蓮はきっと我慢することでお母さんを支えてきたんだ。 それが小さかった蓮にできる唯一の手段だったんだ。 私は蓮に 「蓮頑張ってたんだね」 と横たわる蓮を抱き締めた。
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