13章

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「もう帰るわ」 すっかりお母さんと気が合っちゃって、ファッションの話で盛り上がり、いつの間にか蓮を抜け者にしていた。 痺れを切らしたのか、ちょっと不貞腐れた蓮にお母さんが 「まだ美優ちゃんとおしゃべりしたいわ。蓮もうちょっといいでしょ?」 甘い声を出したお母さんはお願いと手を合わせて蓮に頼めば、蓮は逆らえないのか 「わかったよ」 と、社長の椅子にまた座った。 「蓮は甘えればすぐ許してくれるの。美優ちゃんもお願い事はこうやってするのよ」 こそこそと耳元で言った。 さすが蓮のお母さん。私以上に蓮のことはわかっている。なんだか蓮のお母さんってかわいい。 「ねえ、美優ちゃん」 「はい」 「蓮との結婚考えてる?」 何を言われるかと思えば…… 「け、結婚ですか!?」 思わず上擦った声を上げてしまった。 「私早く二人の子供みたいわ」 さきほどと同じく甘い声でおねだりするみたいにお母さんは言ったけど…… 「ふふっ、楽しみにしてるわね」 ウインクで攻撃してきたお母さん。 爆弾宣言に言葉が詰まってしまった。 でもそこで助けてくれたのは蓮で 「美優を困らすなって。結婚なんて時期がきたらするもんだ」 って…… 時期がきたらか……それはいつなのか私にもわからない。 少しでも私との結婚を考えてくれているなら嬉しいな。 「美優帰るよ」 「今日は楽しかったです。ありがとうございました」 「蓮がいなくても遠慮しなうで遊びに来てね」 「はい」 絶対来てね、と念を押されて……挨拶をして私達は社長室を出た。 「かわいいお母さんだね」 「あれが?うるさくて疲れる」 「そうかな。私は羨ましいな。うちのお母さんあんなにきれいじゃないし」 「あれ普通だろ」 間違いなく普通じゃないよ。 だってオーラが違うもん。 冷たい人だったらって思ったけど、優しくて楽しいお母さんでよかった。 携帯の番号も教えてもらって、蓮のことで悩んだら相談に乗るからねって言ってくれた。 今日は蓮のお母さんに会えてほんとによかった。
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