14章

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会社近くのいつもの居酒屋。 私は高杉くんを待っていた。 待ち合わせは6時半。 少し早めに来てしまった私はメニュー表を眺めて時間を潰していた。 さすが金曜日。店は混雑していて店員さん達は忙しそう。 「ごめん。待った?」 息を切らした高杉くんが入ってきて申し訳なさそうに眉を寄せ謝っている。 「ううん。来たばっかりだよ」 「急に電話入っちゃってさ」 店員さんが持ってきたおしぼりで手を拭きながらメニュー表を見て 「何飲む?」 今日は飲まないでおこうと決めてたから 「オレンジジュース」 「はあ?お前飲まないの?」 「うん。今日はやめておくよ」 「飲まないお前なんてつまんねぇよ」 「ひっどい。それって普段はつまらない奴ってこと?」 「そうじゃねぇけどよ」 否定してるわりには笑いすぎだよ、高杉くん。 「もう年末だな」 「なんか一年早かった。恐怖の12月が来ちゃったね」 「来週からは地獄だよ」 12月の26日まではほんとに会社全体忙しくなって残業が毎日続く。 それが終われば長いお正月休みなんだけど……それまでが大変。 「うん?」 高杉くんがなんか言いたそうに私を見ていて…… あ、違う。高杉くんの視線は首だ。 さっき蓮に付けられたキスマークを見ているんだ。さりげなくキスマークに手を当てて隠してみたけど…… 高杉くんは急に真剣な顔になってしまって、私はどう対応していいのか戸惑っていると 「お前さ。社員旅行の時……泣いてたよな。うちの会社に彼氏いるの?」 「えっ」 驚いてしまって思わず私は押し黙っていた。
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