14章

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「井上の彼氏って神堂部長ですか?」 背筋を伸ばしてはっきりとした口調で高杉くんが蓮に言った。 それは何かを確信したかのように自信を持っている瞳で…… 高杉くん……いつ知ったんだろう…… 私は驚きのあまり下を向いたまま顔を上げれない。 どうしてわかっちゃった? 「だったらどうなの?」 蓮は挑発しているのか高杉くんを煽るように口角を上げて答えた。 嫌な空気が流れていて松田さんはただ黙って二人の話を聞いてるだけ。 「俺、井上が好きなんです」 「え?」 高杉くんの突然の告白に俯いていた顔を上げ目を見開いた。 「社員旅行で井上が泣いていたのは神堂部長のことで泣いてたんですよね」 「美優、バレちゃったね」 余裕の笑みで蓮は私を見た。 ばらしちゃっていいの?私はただどうしていいかわからなくて目を泳がせた。 「今日ここに来たのも、井上の首も俺への当て付けですか」 「今日ここに来たのは春樹に誘われたから。美優の首は虫避け?かな」 高杉くんは一瞬目を細めて下唇を噛んだ。蓮は勝ち誇った態度でビールを飲んでいて…… 「俺、井上のこと諦めません」 買い言葉に売り言葉で高杉くんも譲らずで、一向に話が収まらない。 蓮は高杉くんを睨むとビールのジョッキーをテーブルに置いて、 「高杉は俺のライバルってことだ」 「そうです」 「ちょっと二人共もうこの話は」 「井上、俺負けないから」 「高杉くん……私は蓮のこと」 「わかってる。井上が神堂部長を好きなのは。でもだからって諦めるわけにはいかない。俺の気持ちは半端なものじゃないから」 横に座る蓮を見ても知らん顔で…… 「俺帰るな。今日は楽しかった」 と伝票を握った高杉くんに 「お金……」 「今日は俺の奢り。じゃあな」 高杉くん……
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