14章

10/16
前へ
/549ページ
次へ
「蓮、言っちゃったね」 他人事のように爽やかな笑顔で松田さんは焼き鳥を食べながら言う。 「バレちゃって大丈夫かな……」 私が心配になって蓮に聞くと 「あいつは汚いことはしない。特に美優を傷付けることはね。春樹がここに連れて来てくれたお陰でいい話聞けたよ」 蓮はきっと高杉くんの気持ちを知っていたんだ。 松田さんとここに来たこともキスマークを目立つ所に付けたのも、きっと蓮は高杉くんのことをわかってて…… 「美優これからは高杉に気を付けてね」 「うん……」 高杉くんのことは同期というだけで一度も感情を持ったことがなかった。ただほんとに良い人で話しやすくて……私は何も気付かなかった。 「何、ぼっーとしてんの」 蓮は両手で私の頬を掌で挟み、優しい瞳で見つめてくれた。 「おい、ここでキスするなよ」 松田さんにはそう見えてしまったのか 「お前になんて見せねぇよ」 ニヤッと蓮は笑った。 蓮がビールを飲んでしまったので自家用車は会社に置いたまま、私達はタクシーで帰宅した。 蓮がタクシーの中でずっと私の手を離さなかったのは高杉くんのことがあったからなのかな、と思ってしまうのは私の気のせいかな。 「美優風呂入るよ」 「うん」 蓮は帰って来てから一言も高杉くんのことを口にしなかった。
/549ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23658人が本棚に入れています
本棚に追加