14章

15/16
前へ
/549ページ
次へ
「梨花が待ってるからもう行くね」 「ご飯ぐらいゆっくりすれば?」 「うん……でも梨花がまだ食べてなくて私と交代なの。きっとお腹空かして待ってると思うから。じゃあ、またね、高杉くん」 梨花のこともあったけど、とにかくここで高杉くんと長居するのはよくないと思い、少し急ぎ足で社員食堂を出た。 「ふう……」 びっくりした。まさか口を拭かれるとは思わなかった。 一瞬の出来事で避けることもできなくて、ただ驚いてしまって体が固まっていた。 あの告白があったから余計気まずかったのに、やっぱりそこは高杉くんらしく、何もなかったかのように接してきた。 変に考えすぎだったのかな。 「キャッ」 突然誰かに腕を引っ張られ、後ろから口を押さえられて非常階段に引き摺り込まれた。 その時フワッと香水の香りがして…… 口から手を外されて首だけ後ろを向くと不機嫌そうな蓮がいた。 「蓮」 「何やってんの?」 「え、何って……」 「高杉には気を付けろって言ったよね」 「……」 「簡単に触らせるなよ」 蓮……見てたんだ。私は視線を足元に落として押し黙ってしまった。 「美優は隙がありすぎるんだよ」 顎を蓮の指先に掴まれて顔を持ち上げられた。 キスをされると思い蓮の顔が目の前に近付いた時、私は目を閉じると…… ぺろんと生暖かい感触が口角の横で感じた。 「え?」 その場所はさっき高杉くんにミートソースを拭かれた場所だった。 「消毒」 そう言って悪戯っぽく笑った蓮に私は顔を赤く染めていた。
/549ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23658人が本棚に入れています
本棚に追加