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「梨花が待ってるからもう行くね」
「ご飯ぐらいゆっくりすれば?」
「うん……でも梨花がまだ食べてなくて私と交代なの。きっとお腹空かして待ってると思うから。じゃあ、またね、高杉くん」
梨花のこともあったけど、とにかくここで高杉くんと長居するのはよくないと思い、少し急ぎ足で社員食堂を出た。
「ふう……」
びっくりした。まさか口を拭かれるとは思わなかった。
一瞬の出来事で避けることもできなくて、ただ驚いてしまって体が固まっていた。
あの告白があったから余計気まずかったのに、やっぱりそこは高杉くんらしく、何もなかったかのように接してきた。
変に考えすぎだったのかな。
「キャッ」
突然誰かに腕を引っ張られ、後ろから口を押さえられて非常階段に引き摺り込まれた。
その時フワッと香水の香りがして……
口から手を外されて首だけ後ろを向くと不機嫌そうな蓮がいた。
「蓮」
「何やってんの?」
「え、何って……」
「高杉には気を付けろって言ったよね」
「……」
「簡単に触らせるなよ」
蓮……見てたんだ。私は視線を足元に落として押し黙ってしまった。
「美優は隙がありすぎるんだよ」
顎を蓮の指先に掴まれて顔を持ち上げられた。
キスをされると思い蓮の顔が目の前に近付いた時、私は目を閉じると……
ぺろんと生暖かい感触が口角の横で感じた。
「え?」
その場所はさっき高杉くんにミートソースを拭かれた場所だった。
「消毒」
そう言って悪戯っぽく笑った蓮に私は顔を赤く染めていた。
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