15章

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「ただいま」 真っ暗な部屋に明かりを灯し、私はソファに腰を降ろした。 時計を見るとすでに10時を回っている。 疲れで体が重くソファから離れようとしない。 蓮はまだ会社にいた。 あの様子だと日付が変わってからの帰宅になるかもしれない。 「まだ残業は続くから今日は帰れ」 と部長の蓮からの指示が入り、女子社員達は交通機関がまだある時間に帰された。 ブブッ、ブブッ ローテーブルの上に置いてあった携帯が振るえて、それが蓮ではないかと思い急いで取ると 『遅くなる。先に寝てて』 と、私にはちょっと物足りない文字。 きっとこれ以上の言葉を求めても蓮はあまりメールが好きじゃないのはわかっているから、そこは諦めで。 『わかったよ。無理しないでね』 そう私は返信した。 もしかしたら蓮がいない夜は初めて? 蓮が飲みに行っても何時頃帰ると必ず言ってくれるから、私も起きて待ってたりするけど…… 今日はいつ蓮が帰るかわからない。 改めて一人ぽつんと部屋にいると、この部屋の広さに圧倒的されてしまう。 蓮がいないのはこんなにも寂しいものなのだと感じた。 「よしお風呂に入ろう」 お湯のスイッチを入れて、その間洗濯物を畳んで…… 静かすぎて妙に落ち着かず、見たいテレビもないのに適当にリモコンを押した。 テレビから笑い声が聞こえてくるけど、それに目をやることなく洗濯物を畳み終わった私はお風呂場に向かった。 これもまた久しぶりの一人のお風呂。 生理以外は毎日一緒に入っていたから、後ろに蓮の温もりがないのもまた違和感がある。 「早く上がろう」 さっさと洗い、お風呂から出るとまた携帯が振るえていて、走って行くと 「蓮だ」 今度はメールではなく着信だった。 「蓮?」 「何してた?」 「今ね、お風呂から上がったの」 「そっか。今日帰れないから鍵ちゃんと閉めて」 「帰れないの?」 「今日やらなきゃいけないのが増えた」 「うん……わかった」 「朝寝坊しないように」 「大丈夫だよ」 少しだけしゃべって携帯を切った。 初日からこんなに忙しかったら、この先もっと忙しいのに……
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