15章

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ガチャ あっ……蓮だ。 鍵の開ける音が聞こえた。 私が玄関に向かうと 「ただいま」 と、優しい笑顔で私の頭をポンポンと叩くとリビングに入って行った。 蓮の後を追うようについて行くと鞄を床に置き、ドカッとソファに座った。 「疲れた」 ネクタイを緩めて首から抜き取る仕草にキュッと胸が熱くなる。 「おいで」 と言われて、私は犬のように尻尾を振って、ソファに座ろうとする前に腕を引かれて、蓮の膝の上に乗せられた。 「美優に触れるの久しぶり」 外から帰った冷たい蓮の指先は私の頬に触れる。 ひんやりした指先は火照った頬に丁度いい。 「寂しかった?」 「うん」 「俺も寂しかった」 同じ気持ちでいてくれたことが嬉しくて、頬にある蓮の手に自分の手を重ねた。 「24日はケーキ買ってるから」 「え……でも仕事……」 遠慮がちに言うと 「そのために今仕事頑張ってるだろ。だからクリスマスイブは一緒に過ごせるよ」 「ほんと?」 口角を左右に上げた蓮は私を愛しそうに見つめて、そっと耳に髪の毛を掛けた。 「ずっと寂しい思いさせてたな」 寂しかったけど、今ここに蓮がいてくれることで寂しかった思いなんてどっかに飛んでしまった。 「私ね、毎日掃除してきれいにしてたんだよ」 ちょっと自慢気に勝ち誇った顔で言うと蓮は 「おりこうさん」 と言ってクシャクシャと頭を撫でるから私は口を尖らせて 「もおー私子供じゃないんだよ」 「美優はまだまだ子供」 蓮がクスッとバカにした笑いが無邪気な子供のような笑顔で、 「蓮も子供みたいだよ」 「会わない間に反抗的になったな」 そう言った蓮は首を少しだけ傾けて真顔になった。 それはキスの合図。 ゆっくり近付く顔に私は抵抗もせずに目を閉じると、何日ぶりかのキスが落とされた。
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