プロローグ

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「井上」 パソコンに入力中だというのに、そんなことお構いなしに神堂部長は私を呼ぶ。 「はい」 私はパソコン画面に名残惜しみ、椅子から腰を上げて神堂部長のデスクに向かった。 「これ営業課に渡して来て」 私の顔を見ないで書類だけを差し出す神堂部長にムッとくるけどそこは我慢で。 経理課に行くなら私じゃなくてもいいのに‥‥‥ なんて心の中でもんくを言うしかなくて。 「受け取ったら早く行って」 「はい‥‥‥」 私とは普段から目を合わせてくれなくて‥‥‥ やっぱり今も目を合わせず書類を出された。 なぜそうなのか理由はわからない‥‥‥ あまり気にしないようにしよう。 受け取った書類に目を通しながら親友の梨花(スズキリカ)の横を通り過ぎようとすると‥‥‥ 「早く行かなきゃまた怒られるよ」 ニヤけた顔で梨花に言われて立ち止まる。 「なんでいつも私なんだろうね?梨花だっているのに‥‥‥」 フフッと笑った梨花は 「神堂部長のお気に入り?」 「え?私が?絶対それはないと思うよ」 どこからそんな言葉が出てくるのかまったくわからない。 どう見ても神堂部長は私を避けてるというか‥‥‥嫌いなんだろうなって思えてしまう。 梨花と同じ仕事をしているのにいつも私だけこんな扱い。 書類のお届けで営業課の人達とも仲良くなったりするけど。 有り難いのか有り難くないのか‥‥‥息抜きにオフィスから離れられるのは良いんだけど‥‥‥ ただ、仕事が貯まっているのにこう使われるのはちょっと納得いかない時もある。 でも神堂部長は私の上司だし‥‥‥ 逆らえる訳がない。
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