16章

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「昨日、春樹といる時に美優の携帯が繋がらないって春樹の携帯に連絡きてさ」 蓮…… 「クリスマスは早く帰りたいから会社泊まって仕事するって。だから会社から出れないって」 「……」 「美優の携帯に何回も連絡したみたいだよ」 「……」 「どこにいたの?」 「昨日は……実家に帰ってて……」 「携帯は?」 「バイブにしてて……それから電源切れたみたいで……」 「ちゃんとあいつに連絡しなよ」 梨花は呆れ顔で深い溜め息を付いて 「美優ほんとは……何かあったんじゃないの?」 鋭い梨花は私の誤魔化しなんて通用しない。 でも今はほんとにそっとしておいてほしくて、 「何もないよ」 って苦し紛れの嘘を付いた。 「そう」 諦めてくれたのか梨花はスプーンをニ口ほど運び 「今日はクリスマスなんだから一緒に過ごしなさいよね」 とクリスマスと言う言葉を強調して言った。 「うん……」 何も話せなくてごめんね、梨花。 時間がまだあったので私は社員食堂から一人で更衣室に行き、携帯を開いたまま考えていた。 ディスプレイには蓮からのメールが2件入っていた。 『昨日はどこにいた?』 『連絡して』 短い文章だけどそれを見るだけで胸がギュッと熱くなる。 嬉しいのに素直に喜べない。 婚約者のことを聞きたいのに怖くて聞けない。 私はどうしたらいいの……
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