16章

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定時になり、私と梨花は仕事を終わらせて更衣室に来ていた。 「ちゃんと話せた?」 「あ、うん」 お互い私服に着替えながら帰る準備をして、梨花はこれから松田さんと会うから念入りに化粧をしている。 私は……泣き腫らした顔でほとんど化粧なんて取れていて…… そんな顔でも梨花は深く聞いてこなかった。 少しだけファンデーションを塗ってロッカーの鏡で自分を見れば、情けないぐらいひどい顔。 呆れて何も言う言葉もない。 「下で春樹待ってるから行くね」 「うん」 「じゃあね、美優。あっ、必ず二人でクリスマス過ごすんだよ」 手を振って出で行く梨花に、顔を引きつらせながら笑顔を見せて見送った。 「はあ……」 まだ行くか迷っている私はパイプ椅子に腰を降ろした。 資料室からオフィスに戻ってから自分がどうするべきかどうしたいのか考えた。 そして私の気持ちはどうなのか…… ただ一つだけ言えることは蓮が好きということ。 これは狂うことなく変わらない気持ち。 婚約者がいようと私の好きはそう簡単に壊れるものではない。 「私の気持ちは変わらないんだ」 蓮への気持ちは決して変わらない。 勢いよく立ち上がった私はコートを着てバックと携帯を持ち、蓮が待ってくれている駐車場へ駆け出した。 揺らぐことないこの気持ちを…… 私の想いだけは伝えたい。
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