16章

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しんしんと降る雪の中、転ばないように蓮がいる駐車場まで私は急いだ。 映画のワンシーンのようなシチュエーション。 街は雪の降るホワイトクリスマスとなった。 傘を差すことなど忘れて身なりがべちょべちょで、私はただひたすら走った。 すれ違うカップルを避けながら、もう少しで着く駐車場へと走る。 私より先に出たからもう着いているはず。 信号を渡っていつも停車している所に行くと蓮の車が止まっていた。 もう息が苦しくて呼吸をするのもやっとで…… 髪の毛から溶けた雪が雫となって落ちていき、涙のように頬を伝う。 蓮が私に気付いたのか車から降りて来た。 「美優」 フワッと抱き締められた腕はとても暖かくて、今までの寒さなんて忘れてしまうぐらい。 「傘ぐらい差せよ」 「だって蓮に早く会って伝えたかったから」 私が顔を上げれば、蓮の頭に雪が降り注いで、それはとても神秘的でこんな時でも蓮を格好いいと思ってしまう。 「私ね……」 胸の鼓動がどんどん高まっていき、心臓が激しく動く。 「私、蓮が好き。婚約者がいても好きなの……この気持ちは変わらない」 蓮を見れば、穏やかな顔で口元を上げて 「そんなこと知ってる。美優のことは誰よりもわかってるつもりだけど」 「蓮……ちゃんと教えてほしい。隠さないで全部教えて」 「……わかった」 傷付いてもいい。別れることだって覚悟してる。 だから、婚約者のこと話してほしい。 「このままだと風邪引くから車乗ろう」 蓮の手が私の肩を抱き、助手席のドアを開けてくれて、私は迷うことなく車に乗った。 髪から滴る冷たい水滴が顔の輪郭を通って流れていく。 この先、何が起こっても私は後悔しない。 例えそれが別れの道でも……覚悟はできている。
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