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「離してよ」
大声を上げながらリビングに入って来たのは……
やっぱりあの人だった。
殺気立つ彼女は蓮に腕を掴まれて振り払おうと必死にもがく。
「私の忠告聞けなかったの?」
私の存在に気付いた彼女は目を吊り上げ、あの日と同じ冷たい目で私を睨んだ。
「ここ出で行くように言ったわよね?」
そう言った彼女に割り込んだ蓮が、掴んでいた腕を後ろに回した。
「痛いっ」
「美優に手を出すなって言ったよな。わかってないのはお前だろ」
蓮はさらに彼女の腕に力を入れた。
「な、何よ、こんな女!」
「お前よりいい女だろ」
口元は笑っていても蓮の目は笑っていなくて、そんな蓮を怖いと感じたのか彼女は一瞬怯んだ。
でも彼女の怒りは治まらなくて、
「あんたも私みたいにもて遊ばれるのよ!」
「昔の蓮は知らないけど……今の蓮はそんなことしない!」
だって、昔の蓮がいたからこそ、今の優しい蓮がいる。
それなのに蓮にもて遊ばれるなんてそんなひどいことを……
「優しいのなんて今だけよ!」
「違う、あなたは何もわかってない!」
「美優もういい。こいつに話しても無駄だ」
「私と同じ苦しみを……」
そう言った彼女は蓮の腕から逃れ私に向かって走って来た。
彼女がもの凄い剣幕で近寄って来て、危ないと思った私は目を瞑った。
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