16章

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「離してよ」 大声を上げながらリビングに入って来たのは…… やっぱりあの人だった。 殺気立つ彼女は蓮に腕を掴まれて振り払おうと必死にもがく。 「私の忠告聞けなかったの?」 私の存在に気付いた彼女は目を吊り上げ、あの日と同じ冷たい目で私を睨んだ。 「ここ出で行くように言ったわよね?」 そう言った彼女に割り込んだ蓮が、掴んでいた腕を後ろに回した。 「痛いっ」 「美優に手を出すなって言ったよな。わかってないのはお前だろ」 蓮はさらに彼女の腕に力を入れた。 「な、何よ、こんな女!」 「お前よりいい女だろ」 口元は笑っていても蓮の目は笑っていなくて、そんな蓮を怖いと感じたのか彼女は一瞬怯んだ。 でも彼女の怒りは治まらなくて、 「あんたも私みたいにもて遊ばれるのよ!」 「昔の蓮は知らないけど……今の蓮はそんなことしない!」 だって、昔の蓮がいたからこそ、今の優しい蓮がいる。 それなのに蓮にもて遊ばれるなんてそんなひどいことを…… 「優しいのなんて今だけよ!」 「違う、あなたは何もわかってない!」 「美優もういい。こいつに話しても無駄だ」 「私と同じ苦しみを……」 そう言った彼女は蓮の腕から逃れ私に向かって走って来た。 彼女がもの凄い剣幕で近寄って来て、危ないと思った私は目を瞑った。
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