16章

15/18
前へ
/549ページ
次へ
「寒くない?」 「寒くない」 「お腹空いてない?」 「空いてない」 「怒ってる?」 「怒って……ない」 またそこでククッと蓮が笑うから、なんだか私も可笑しくって一緒に笑ってしまった。 「きっと美優喜ぶ」 私が喜ぶ?いろいろ考えたけど、どこへ行くのかやっぱりわからない。 でも街の方へ向かっているみたいで。 街はクリスマスのせいかまだ賑わっていて、たくさんの人が歩いている。 「あ、ケーキ」 サンタクロースの格好をした女の子がこの寒い中ケーキを売っている。 「蓮、ケーキ買いたい」 私は車を止めてもらおうとケーキ売り場に指を差した。 「ケーキならあるよ」 と蓮が視線を後部座席へ移すと 「あっ、ケーキ」 ピンク色のケーキの箱が後部座席に置いてあった。 まさかケーキがそこにあるなんて暗くてまったく気付かなくて…… 用意してくれたんだ。 「蓮ありがと」 「俺が買ってくるって約束したから」 前を向いてハンドルを握る蓮をちらっと見れば真剣な表情で運転していて、今すぐここで抱き付きたくなる。 いろいろあったけど、彼女が婚約者じゃなくてよかった。 もし本当の婚約者だったら…… 今日はお父さんとお母さんとクリスマスパーティーを…… 「あ!」 「なんだよ突然」 「お母さんに電話してない!」 きっと今頃たくさん料理を作って、ケーキを買って…… 「お母さんに電話する」 慌てて携帯を取り出して、電話をすると 『美優、どこにいるのよ!』 案の定、お母さんは怒っていて…… 「今あの……蓮と、うわっ」 突然、横から伸びてきた蓮の手に携帯を奪われてしまった。
/549ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23658人が本棚に入れています
本棚に追加