16章

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蓮は買い物袋。私はケーキの箱。 それぞれ荷物を持ってマンションのエレベーターが降りてくるのを待っていた。 ガラス越しに映った私達。新婚さんみたいで、その姿に胸がポカポカ暖かい。 いつかこれが現実になるといいな。 なんて一人で妄想していると、 「何一人でニヤけてんの?」 「ニ、ニヤけてないもん」 蓮の子供を産んで幸せな家庭を築くのが私の細やかな夢。 でもそんなこと蓮に言ったらまたバカにされそうだから、蓮には言わない。 「乗るよ」 「うん」 今回は……俺の過去のせいでせっかくのクリスマスを台無しにしてしまった。 美優はずっとクリスマスを楽しみにしていた。 ここまで葵がするとは思わず、適当に流してきたけど葵は美優に会いに行っていた。 まさか事がこんなに大きくなるとは…… もしあの時、葵が美優に手を出していたら…… きっと俺は今頃…… 考えただけで寒気がする。 でもあの時のことがあったから美優をこんなに好きになれて誰かを守りたいと思えるようになった。 それは葵のことがあったから。 自分を変える切っ掛けをあいつはくれた。 だから次はあいつが幸せになる番。俺以上もっと幸せになってほしい。そしてどこかでそんな幸せな葵の姿を見てみたい。 今日は俺なりのシチュエーションを考えていて…… でもそれは不可能となったから、イルミネーションだけでもと思って連れていった。 思った通り、美優は喜んでくれて。 目いっぱいに涙を溜めて一面に広がるイルミネーションに感動していた。 泣き虫の美優は結局涙を流して喜んで…… 子供みたいにはしゃいで泣いて、そして心が真っ直ぐで。俺が美優を守らないといけないんだってそう思った。 どんなことがあっても美優を手離してはいけない。 美優の笑顔が消えないように俺が隣で支えていたい。 泣き笑いをする美優のこの笑顔がいつまでも続くように、ずっと俺も笑っていたい。 この日の出来事が俺の気持ちを強くしてくれた。
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