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「美優がいつもお世話になっています」
お父さんの顔面が物凄い迫力のある恐い顔になってて……
蓮大丈夫かな……
「神堂くん、座って下さい」
お父さんに言われた蓮は、はいと返事をしてソファに座った。
テレビからはお笑い番組なのか笑い声が聞こえている。
それなのにこのリビングは……
お互い口を開かないで黙ったまま。嫌な空気が流れていて……
でもそれを破ったのはお父さんだった。
「美優は会社できちん仕事しているかい?」
「はい、僕の部下として一生懸命働いてくれて、自分の与えられた仕事はミスなくやってます」
「そう……」
「……」
「……」
また静かになっちゃった。私はこの静けさに堪えられず、
「お父さんこれね、蓮が買ってくれたの。お父さん串団子好きでしょ?」
「ああ、すまない」
「せっかくだから食べよう」
お父さんは串団子に手をつけずムスッとしたまま……
そして突然、蓮の名前を呼んだ。
「神堂くん」
「はい」
名前を呼ばれた蓮はピンと背筋を伸ばして向き合った。
「美優とは……この先のことを考えているのかい?」
「お父さん、そんなこと聞かないでよ」
そう言った私に蓮は腕を出してこれ以上言わせないように阻止して、優しい眼差しでコクンと頷いた。
それはきっと大丈夫だよっていう蓮なりの合図で……
「僕は美優さんとは結婚前提でお付き合いしています。僕にとって美優さんはいなくてはならない存在で、大切な人です」
蓮は揺らぐことなく真っ直ぐお父さんの目を見ていた。
こんな大事な話の時に蓮の結婚宣言にキュンって心臓が高鳴って私は顔を緩ませニヤニヤしていた。
「美優をそう思ってくれているなら安心だ」
強張っていたお父さんの顔に笑顔が現れて、蓮の良さをわかってくれたのか……
「母さん、ビール」
と、ニコニコ顔でお母さんを呼んだお父さんはさっきの恐い顔と打って変わってぜんぜん違っていた。
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