19章

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「おはよ」 ベットの上で目覚めのキスをもらって、そこから私の慌ただしい朝が始まる。 蓮と付き合って一年が経って…… 相変わらず蓮にお尻を叩かれながら、私は出勤前の準備に慌てていた。 「遅い。あと10分で先に行くから」 「あー待って。すぐ準備する」 慌てれば慌てるほどメイクがうまくいかなくて。 マスカラがはみ出ちゃった。 「いやー」 毎日の光景だから、私が叫ぼうと泣こうと蓮はビクともしない。 長い足を組んでソファに座ってコーヒーを飲む姿がたまらなく素敵で、口を開けたまま見惚れていると…… 蓮に見つかってしまい、 「美優は置いていかれたいんだ?」 「いえ一緒に行きたいです」 「いい加減に学習したら?」 「はい」 鋭い目が私を睨んでて、怖い私は急いでまたメイクに取り掛かる。 「できた」 鞄にメイク道具に携帯に…… 「あれ?あれ?」 私は小走りで寝室に行き、布団を捲って、ベットの下を覗いて、サイドテーブルの引き出しまで開けて…… 「蓮、私の携帯知らない?」 「知らない」 「どこに置いたかな……」 「キッチンは?洗面所は?」 やれやれと呆れた顔の蓮はソファから立ち上がり、ポケットから携帯を出してどこかに電話をしている。 ♪~ どこからか音楽が流れていて…… 蓮は音の鳴る方に歩いて行き、私もこっそり着いて行くと…… 洗面所? しかも洗濯機の中? 蓮が洗濯機の中から取り出したのは私のジーンズ。 「あっ!」 私は蓮の手からジーンズを奪い取りポケットの中にある私の携帯を取ると、 「携帯は洗濯しなくていいよね?」 「は……い」 「朝、洗濯機使ってたら今頃水の中だったよね」 「は……い」 「はあ……」 「ごめんなさい」 やってしまった。まさかの大失敗。蓮が気付いてくれなかったら、今頃携帯は水浸しだった。 「これからは気をつけるように」 ポンポンと私の頭を叩いて蓮はリビングに行き、 「遅刻するよ」 って声を掛けてくれて…… 私はまた自分の失敗に落ち込んでいた。
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