23659人が本棚に入れています
本棚に追加
会社に来ると赤の他人になってしまう寂しさと、今朝の失敗ですっかり落ち込んでいた私に、
「あら?今日は優れない顔だね」
って梨花が声を掛けてきて……
「ねぇ?松田さんってどんな人?」
はあ?っていう顔をした梨花は驚いた後で笑いながら、
「どんな人って見たまんま」
うーん。見たまんまか……
「またなんかあったの?」
「なんかというか……」
「はいはい、昼休み聞いてあげるから今はこれやっちゃうよ」
数十枚の請求書を梨花から受け取って、パラパラと捲りながら松田さんと蓮の違いを考えていた。
「で、どうした訳?」
「朝ね……」
携帯をなくしたことを説明すると、
「それは美優らしいね」
なんてゲラゲラ梨花は笑っちゃって。
「で、怒られたの?」
「ううん。たぶん……また呆れちゃったんだと思う」
「春樹とあいつは親友だけど性格はまるっきり違うからね。春樹ならそうだな……私より慌てて探しそう。たぶん、あいつみたく冷静な判断はできないかな」
「松田さんって爽やかしてるよね」
「うんまず怒らない。逆に私がいつも怒ってる」
もしかして蓮とは梨花は似ているのかも……
確かに、松田さんは俺様っていうよりほんわかしていて、梨花の方が強そうだ。
「怒ってないならあんまり気にしなくていんじゃない?」
「そうだけど……自分のこういう所が嫌でね」
「あいつは好きで一緒にいるんだからいんだって。ほんと美優は考えすぎなんだから」
「う……ん」
なんか都合良くまとめられたような。
話はいつの間にか違う話題になっていて。
さっきからなんだか汗ばんでいて、頭がユラユラしている。
風邪でも引いたのかな……
帰ったら薬飲んでおこう。
私達は食事を済ませて、オフィスに戻って、また午後からの仕事に追われていた。
最初のコメントを投稿しよう!