19章

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「なんかだるいな」 帰る前に蓮から、 『今日は残業するからご飯はいらない』 とメールが入っていた。 だるい体で駅まで歩いていたら、なぜか額に汗が滲んで……それをハンカチで拭いながら、もう少しで着く駅を目指していた。 駅の階段を降りている途中だった。 立ち眩みがして私は横にあった手摺に慌てて掴み、その場にしゃがみこんでいた。 なんとなく寒いし……熱出てきちゃったのかな…… 「大丈夫ですか?」 男の人が屈んで声を掛けてくれて、足元の靴が目に入った。 「大丈夫です」 と、答えて顔を上げた先には…… 「凌太?」 「み、美優?美優だったのかよ。お前具合悪いのか?」 「ちょっと目眩がして……」 びっくりした。まさか元彼の凌太にこんな所で会うなんて……しかも具合悪くてしゃがんでいる姿を見られてしまって。 「顔色悪いぞ」 「ちょっと風邪引いたみたいで。でももう大丈夫」 私は手摺に掴まりながら立ち上がった。 目眩も治まりなんとか大丈夫そうだ。 「送って行こうか?」 「ううん。大丈夫。もう良くなったから」 「でも途中でまた具合悪くなったらどうするんだよ」 「ほんとに大丈夫」 「マンション変わってないんだろ?駅降りてからも結構距離あるだろ?」 凌太はまだあそこに住んでいると思ってるんだ…… 「私、引っ越したんだ」 「引越したの?」 「うん……」 凌太はそっかと言って視線を遠くへ逸らした。 「ほんとに大丈夫だから、心配してくれてありがとう。電車来ちゃうから行くね」 鞄を肩に掛けて階段を降りようとしたら、 「ちょっと待って」 と、言って凌太は私の腕を掴んだ。
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