19章

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驚いた私は目を見開いた。 「え?」 「あ……ごめん」 強く掴まれた所がズキンズキンと痛くて私はそこに触れた。 「ど、どうしたの?」 「いや、ほんとに大丈夫かなって」 凌太は頭を掻きながら笑っていて…… 「ありがとう。でも大丈夫だから」 「そっか……わかった。気をつけて帰れよ」 「うん。じゃあね」 私がそう言うと一瞬寂しそうな顔をして……そして手を上げて階段を昇って行った。 私は凌太がそんな顔をしていたのも知らず、急いで改札口を通って電車に駆け込んだ。 誰もいない部屋に明かりを灯し、雪崩れ込むようにソファに転がる。 だるさがさらに増して、このまま寝てしまいたいほどで。 蓮が遅いから晩ごはんの支度もないし…… でも熱を計らなきゃ。 そう思い、体を起こして救急箱から体温計を出して熱を計れば、 「あれ?熱ない」 こんなにだるいのになんで?と、思った私はもう一度計ってみたけど…… やっばりない。 首を傾げながら体温計をしまい、またソファに座る。 「蓮まだかな……」 具合が悪いと言ってしまえばきっと蓮は急いで帰って来てくれる。 でも残業をしてまで会社にいるのは仕事がたくさんあるということ。 帰って来てって言いたいけどそこは我慢しなくちゃいけない。 帰宅するまでお風呂に入って待ってよう。 たぶんそんなに遅くならないはず。 私は着替えを持ってお風呂場に行った。 「ふー」 ペットボトルの冷たい水をゴクゴクと音を立てて飲み干せば、渇いた喉が潤う。 でもお風呂に入ったせいかさっきよりだるさを感じてしまって、またソファに寝転ぶとぼんやりした頭に眠気が襲って…… 私は知らないうちに眠っていた。
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