19章

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「あ……蓮……」 「おはよ。トイレ長すぎ」 「あ、うん、ごめん」 「調子は?」 「大丈夫」 蓮は私の頭を両手で押さえておでことおでこをコツンとぶつけ、 「熱はないね」 「うん……」 「具合悪そうに見えるけど」 「いっぱい寝たから頭がまだぼっーとしてるだけ」 「そう」 蓮はあまり納得してないのか曖昧に返事をした。 鋭い蓮だから何かに気付いてしまう。 朝ごはんも無理矢理胃に突っ込んで、吐き気をなんとか我慢してその場を乗り切った。 私は気付かれないようにと、誤魔化すのに必死で…… 蓮に言えない苦痛がいつまで続くのだろうか。 でもその前に病院に行かなくちゃ…… ほんとに私のお腹には蓮の赤ちゃんがいるのか、はっきりさせないと…… 自分の部屋で着替えていた私は自分のお腹を見つめて…… 優しくそっとお腹を触った。 私は産みたいのか、産みたくないのか。 それさえまだわからなくて…… 自分の意志も持てない私がママになるなんて…… 泣きたい気持ちを我慢して、蓮が待つリビングに行った。 「今日は準備早いね」 「うん。早く起きたからね」 「いつもそうだといいんだけど」 と笑顔で笑った蓮の顔を黙って見ていると 「朝からぼっーっとしすぎ」 と、頭をクシャクシャと撫でてくれた。 「美優」 名前を呼ばれてドキッと心臓が跳ねた。それは隠し事をしているから。 出勤時間が来るまでソファに座っていた私は隣にいる蓮を見たけど、どうしても目を見れなくて…… 「ほんとはまだ具合悪いんだろ?」 「悪くないよ」 「さっきから」 「大丈夫だってば!あっ」 蓮は私を心配して気に掛けてくれているのに…… 私はそんな蓮の優しさを考えず、酷い言い方をしていた。
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