19章

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「本当ですか」 先に声を掛けたのは私ではなく蓮だった。 きっと……蓮は納得いかないんだ。 そして残念がってるに違いない。 そんな蓮の顔を直視できなくて、私は膝の上で握っている自分の手を見ているしかなかった。 「尿検査の結果が陰性でした。内診もエコーで見ましたが赤ちゃんは残念ながら……いませんでした」 私の子宮の画像見ながら先生は詳しく説明していた。 先生の説明で蓮も諦めたのか肩を落として先生の話を何も言わず聞いてる。 「今回、生理が遅れたのは生理不順が原因でホルモンのバランスが崩れて、めまいや吐き気が起こったと思います。これを放っておくと妊娠が不可能となったり、生理痛がひどくなったりします。今後は毎月生理が来るように薬を飲んで治療していきましょう」 赤ちゃんがいなかったことがとてもショックで先生の説明は私の耳には入ってこなくて…… 「これから結婚して赤ちゃんが欲しくなった時にこのままじゃ妊娠しづらくなるの。わかるかな?」 覗き込むように問い掛けてくれた先生はニコッと笑って、 「今回は残念だったけど彼との赤ちゃんが欲しいなら、ちゃんと治療しましょうね」 蓮との赤ちゃん…… 赤ちゃんのことを想うと涙が頬を伝っていて、やっと先生の言っている意味を理解した。 「ほら泣かないで。あなたは若いんだからまだまだこれから赤ちゃんを産めるの。しっかり治して赤ちゃんを産んでね」 「は……い」 隣に座っていた蓮は先生に深々と頭を下げて 「ありがとうございました」 私も蓮に習って頭を下げた。 会計を待つ間、蓮が私の左手を握ってくれて、それだけで沈んだ気持ちが少しでも軽くなったような気がして…… 残念だったのは私だけじゃない。 蓮だって私と同じ気持ちなんだ。
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