19章

17/19
前へ
/549ページ
次へ
泣き腫らした顔で時計を見ればもう夕方になっていて、窓から見える空はオレンジ色に変わっていた。 蓮が早めに帰って来る。 いつまでも泣いていられないと思った私は洗面所に行って、冷たい水を顔に浴びた。 冷たい水が心も引き締めてくれるような気がして…… 鏡を見れば腫れた瞼に苦笑いしてニッと笑顔を作って、パチパチと頬を叩いた。 よしと気合いを入れて、 「いつまでもくよくよしてられないよね」 私はハンバーグの材料を買いに買い物へ出掛けた。 「ただいま」 蓮の声が聞こえて、玄関まで急いで走って、 「おかえりなさい」 と言うと笑顔で答えてくれる。 「ただいま。おりこうさんにしてた?」 「もお、子供じゃないんだよ」 口を尖らせブツブツ文句を言えば、ククッと蓮が肩を揺らして笑っていて、そんな姿にホッとする。 「今ハンバーグ焼くから待っててね」 私がキッチンへ行くと長い指でネクタイを解きながら、蓮が覗いてきて 「うまそう」 と、プチトマトに手が伸びた所を私が見つけて 「だめ。もう少しでご飯なんだら」 「美優のケチ」 「ほら早く着替えて」 「せっかく早く帰って来たのに美優冷たい」 あーもお、すぐ子供みたいに拗ねるんだから。私のこと子供扱いするけど充分蓮も子供だよ。 「できたっ。蓮ご飯だよ」 私がそう言えばすぐ飛んできて、食卓テーブルへ料理を運んでくれる。 手伝ってって言わなくても一緒にいる時は必ずこうやって手伝ってくれる。 そんな蓮の優しさは付き合った頃からずっと変わらない。 きっとこれからもその先も蓮の優しさは変わらないって私は信じてる。
/549ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23659人が本棚に入れています
本棚に追加