20章

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ソファに座った蓮は腕と足を組んでいて、それはそれは俺様の態度で私の動く姿を鋭いその目で監視していた。 私はというと…… 動物園に行くっていうのに、蓮より先に起きて準備をするつもりが蓮より後に起きてしまって…… 要領のいい蓮はもうすでに準備ができていて、コーヒーを飲むほどの余裕で。 少しでも休憩していたら蓮に嫌味たっぷりもんくを言われてしまい、私は急いで準備をしていた。 「まだ終わんないの?予定より30分すぎてる」 「もうちょっとだから待って」 「はあー」 私に聞こえるようにそれも長々と大きなため息をして、蓮はムスッとした顔で足を組み替えてまた、私を急かす。 「あともう少しだからね」 なんて、甘えた声を出しても蓮は無反応で、しまいには、 「置いていこうかな」 ってわざとらしく立ち上がって車のキーを取って、 「今日土曜日だし混んでるだろうな」 あーもお、ちょっとぐらい待ってよ。 私だって必死なんだから。 でもここで怒っちゃだめだ。寝坊したのは私だし、服選びに時間が掛かったのも私だ。 今はまず早く準備をしないと。 あとは鞄に荷物を入れるだけ。 「あ、バック何にしよう」 そんな大きな声で言ったつもりはないのに蓮には聞こえたらしく。 「まさか……ここでバック選びなんてしないよね」 目を細くして睨み付ける蓮の険しい目に私は動けなくなってしまい目だけを泳がせた。 「し、し、しないよ」 「じゃあ、準備できたね」 「……はい」 うっ。やっぱり蓮には敵わない。 会社にいる時もそうだけど、けして強い口調じゃないんだけど、はいって言わずにはいられなくなる人を黙らせる説得力? あれ説得なんてしてないよね? とにかく蓮の一言には反発できなくなる。 それが私なのだ。
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