20章

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やっと蓮の機嫌が良くなったのか…… 車の中の蓮は終始にこやかで、私はホッと胸を撫で下ろした。 今回は私が悪いから怒られても当然なんだけど、蓮が不機嫌になったら話しづらいというか…… ほんとに拗ねた子供のようになるからちょっと厄介で。 この間なんて、蓮のプリンを食べたら次の日まで怒ってて、会社の帰りケーキ屋さんに寄って、買って返したら瞬く間にご機嫌になっちゃってね。 私も食べていい?って聞かなかったのが悪いけど…… まさかそんなことでって思うよね。 普段は俺様のくせに、そうやって子供に戻っちゃう蓮もいて。 フフッ、そんな蓮を知ってるのは私だけで彼女の特権なんだけど。 梨花にこんな話したら転がって笑うよね、きっと。 「一人で笑ってまた妄想?」 「へへっ、ちょっとね」 「何、教えて」 「やだよ。だって蓮のことだもん」 蓮はムッと口を閉じて物凄く嫌な顔をした。 そして運転席から長い蓮の腕が伸びてきて、 「早く教えて」 と、私の頬を摘まんだ。 「痛っ。痛いよ、蓮」 「離してほしいなら不気味な笑いの原因を言え」 「わ、わかったから、言うってば」 すぐムキになるんだから。 「あのね、ほらこの前私が蓮のプリン食べたよね」 「俺が風呂上がりに食べようと思ったら美優が食べてた」 「その時のこと思い出してたの」 「なんで今頃?」 「蓮ってさ、時々子供みたいに拗ねるなって」 「俺は子供じゃない。美優の方がまだまだ子供だ」 やっぱり蓮は気付いてないんだ。自分が子供みたいだってこと。 「私から見ても蓮は子供だよ」 なんて反抗的な態度で言った私がバカだった。 「美優わかってないね。口の横にご飯つぶ付けてたり、買い物行けばすぐ迷子になって、ちょっともんく言えばすぐ口尖らせてすぐ泣くし、チョコ見せたらイチコロで機嫌直るよね。そういうのを子供って言うんだよ」 そこまで言われたら言いたいことも言えないよ。 横目でちらっと蓮を見れば勝ち誇った顔でフッと鼻で笑っている。 あー悔しい。でも蓮の言うことはごもっともで…… 私の観察はまだまだだな。 そんな楽しい車内を過ごし、あっという間に動物園に着いたのだった。
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