20章

7/7
前へ
/549ページ
次へ
「蓮!」 太陽の光が蓮の額に当たって、汗の滴がキラキラ光っている。 私のこと汗だくになって探してくれてたんだ。 「やっと見つけた」 と、蓮は肩を揺らして…… 瞬きする間もなく蓮の胸へ引き寄せられて、私の肩に顎を乗せた蓮は荒い息遣いで苦しそう。 「こんなに走ったの久しぶりかも」 蓮の熱い体温が私の肌を通して伝わり火照った体は湿っていた。 「やっぱり美優は迷子になるんだな」 私を胸から離した蓮は口角を上げて笑った。 「迷子の呼び出ししようと思ったよ」 「迷子じゃないもん。ちょっとはぐれただけだもん」 「それを迷子って言うんだよ」 クシャクシャと私の頭を撫でると満面な笑みを浮かべて、熱いと言って掌でパタパタと顔を扇ぎ、 「迷子の子供見つかったし。行こう」 蓮の手が私の手を握って、次は離さないようにと絡めて繋がれた。 そんな二人の手を見ると胸がキュンと高鳴って、幸せなだなって心から感じる。 どんな時も何があっても…… 絶対離しちゃいけないんだって。 そう思った。 一日中歩いたせいか踏み出す足が重くて、普段どれだけ歩いていないかと思い知った。 蓮は私と違っていつものように爽快に歩いていて、同じ距離を歩いたのに信じられないほど元気で。 「お腹空いた?」 運転している蓮に話し掛けられて、ちょっと眠そうだった私は、 「焼肉食べたいかも」 「いいね、焼肉」 「歩きすぎたからスタミナつけなきゃね」 って真顔で言った私がおかしかったのか、プッと蓮は笑って、 「あれだけで疲れるってどんだけ体力ないの?」 「えっー、たくさん歩いたよ。しかも動物園広かったし私にしたらマラソンしたぐらい体力使ったんだよ」 また蓮は笑い出して、しかもお腹抱えてるし…… そうやってバカにして。いいもん。気にしないから。 焼肉いっぱい食べて体力回復するんだもん。 口を尖らせてた私は焼肉を目の前にすると機嫌が直って、それを蓮はフッと私に聞こえないように笑っていた。
/549ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23659人が本棚に入れています
本棚に追加