21章

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あの……そんなに見つめられると…… 私どうしたらいいのか…… 桐谷課長を見れなくて私は視線は落としたままだった。 ゴホンと咳払いを常務がすると社員達が一斉に静かになる。 「今日から当分の間、井上さんが桐谷くんの部下として一緒に仕事をしてもらいます」 うん?常務……意味がわからないんですが…… 私は蓮の部下で……なぜ桐谷課長の部下? 「えっー」 やっと理解した私は思わず声を出してしまっていた。 慌てて口を塞いだけど、それは遅く…… その時、不機嫌そうな蓮が、 「その話聞いてません」 と、突然、低い声で常務に言った。 「井上さんは神堂くんの下で仕事してたね。今朝急に決まってね。申し訳ないがそういうことだから」 「でも」 と蓮が何かを言おうとした所で、 「井上さんよろしくね」 と、妖艶の微笑みで桐谷課長が割って入り、蓮の言葉を遮った。 蓮を見れば厳しい表情で納得いってない様子で…… 梨花じゃなくなぜ私なのか? どう考えても梨花の方が仕事ができるのに。 解散と言った常務の声でみんな散らばり、各デスクへ戻って行く。 私は突然の話に驚くばかりでその場から動けないでいた。 「美優……」 腕を掴んで、私の体を揺さぶったのは梨花で、 「まっ、決まったことは仕方がないんだから。ねっ」 「そうだけど……」 そうなんだけど、納得いかない部分がまだあって…… それに蓮の言葉を邪魔した桐谷課長のあの余裕な笑みがどうしても気にくわない。 「はあ……」 蓮と離れることとあの桐谷課長と仕事をすることで私は大きなため息をついた。
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