21章

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コピーを終えてそれを蓮に渡して…… 今、私はというと…… 桐谷課長が私のデスクに椅子を持ってきて、パソコンの画面を見ながら説明しているんだけど…… ちょっと近いんですが…… いや、ちょっとどころじゃない。 お互いにパソコンの画面を覗き込んでいるんだけど、右腕が桐谷課長の左腕にふっついている。 かと言って、小さい文字がたくさん並んだ画面を遠くから見て説明するのも困難で…… 周りの女子社員達の冷たい視線が突き刺さる。 女子社員達は今日来たばかりの桐谷課長に興味津々で、そんな人の隣にいるもんだからイラッとしているに違いない。 微かに香る香水の臭いが鼻を擽っている。それは蓮とは違う匂い。 「へー、今はこんな状態か」 そうか、そうかと何度も頷きながら桐谷課長も私も一旦、画面から離れた。 桐谷課長は腕を組んで私に話し掛けてきた。 「3年いないだけでいろんなことが変わったな。俺がいない間に井上さんも入社してたし」 「あ……はい」 「井上さんってあんまりしゃべらないんだ?」 「いえ、そんなことないです」 「さっきから説明のことしかしゃべってないよ」 初対面の人にそうベラベラしゃべるのは苦手で…… 「神堂ってさ。どう?」 いきなり蓮の名前が出てきて眉が上がった。 どう?って言われても…… うーんと考えていると待ちきれなかったのか桐谷課長が話し出した。 「あいつと俺は同期なんだよね」 「え?同期……ですか?」 桐谷課長の見た目があまりにも落ち着いた雰囲気だったから蓮より上かと思っていた。
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