21章

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「そう、俺と神堂は同期」 窓際のデスクで仕事をしている蓮を目を細めて見ている桐谷課長の目はどこか鋭さを感じる。 「で、井上さんはずっと神堂の下で働いてどうだった?」 桐谷課長はまたさっきの話に戻してしまって。 「神堂部長は尊敬する上司で……そしてたくさん仕事を教えてくれます。厳しい所もありますがそれは私のためで……」 「へー、尊敬してるんだ」 な、何、その不気味に笑う容貌は…… 「残念だったね、尊敬している神堂部長から俺になって」 「そ、そんなことないです」 私は怖さを感じてしまい身を縮めてしまった。 そんな桐谷課長に邪悪な空気を感じてしまう。 「今日からは俺が井上さんの上司だからね」 と笑って桐谷課長は言ったけどさっきの笑いは何? 「はい、よろしくお願いします」 と頭を下げると 「こちらこそよろしく」 と手を差し出されて、私はその手を見てから桐谷課長を見ると、うん?と不思議そうな顔をしていて…… 私は慌ててその手と握手をした。 私の考えすぎなのかな…… 「社員食堂のカレーライスってまだ一番人気なの?」 って普通に話し掛けてきて、やっぱり私の思い過ごしかなって…… 「私が入社した時からカレーライスは一番人気ですよ」 「久しぶりに今日はカレーにするか」 背筋を伸ばして頭の上で腕を曲げて体をほぐしている桐谷課長からは違和感を全く感じられず…… 蓮を見ていたあの鋭い目付きと不気味な笑いは…… 私の見間違いだったのだろうか。
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