21章

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桐谷課長の補助として、一日中一緒にいて気疲れで体がクタクタだ。 私は残業の蓮を会社に残して帰宅し、ソファで休息していた。 慣れない相手との仕事は思ったよりしんどくて。 しかもずっと説明していたから喉が少し掠れてしまった。 やっぱり蓮と一緒に仕事をしている方が私らしいというか…… 当分の間って常務が言ってたけど、いつまで桐谷課長と仕事をするのか一切聞いていない。 私の中でまだ謎が多い桐谷課長は帰りも笑顔で挨拶をしてくれて至って普通で。 うーん。 私が警戒するほど悪い人じゃないのかもしれない。 ガチャ 「蓮だ」 鍵を開ける音が聞こえて私は玄関へ走る。 「おかえり」 と笑顔で言うと 「ただいま」 と返ってきたけど…… 朝から不機嫌な蓮は今もまだ機嫌が悪いらしく、曇った表情だ。 後ろから蓮についていくと食卓テーブルにドカッと鞄を放り投げ、ネクタイを緩めながらソファに座った。 なんて声を掛けていいのか……戸惑ってしまう。 ソファの背もたれに首を預け天井を見ている蓮に 「ご飯食べる?」 と、にこやかに言うと、 「美優、ここにおいで」 蓮はソファをポンポンと叩いて私を呼んだ。 私はソファに座り蓮を見た。 「ごめん。桐谷の補助になるって知らなくて」 やっぱり気にしていたんだね。蓮は申し訳なさそうに眉を下げた。 「会社が決めたことだから蓮が悪い訳じゃないよ」 「多分……あいつは自ら美優を指名したと思う」 えっ?それってどういう意味?
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