21章

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「桐谷は俺と美優のことを知っているかもしれない」 日本にまだ帰って来たばかりだよ。それなのに知ってるって…… 「多分だけどな」 「でもどうして……知ってるからって私が桐谷課長の補助になるなんておかしいよ」 蓮は私から視線を落として何も言わず黙ってしまった。 「桐谷には気をつけるように」 と、私の頭を撫でて……蓮は目を逸らした。 嘘。蓮は何か隠してる。やっぱり変だよ。 私達のことを知ったからって私を補助につけるなんて絶対おかしい。 でも蓮はこれ以上話す気がないのか、立ち上がって寝室に行ってしまった。 私には言えない、聞いてはいけない何かが二人にはあるのかもしれない。 蓮が普段着に着替えてきて、そのままキッチンへ行った。 冷蔵庫からビールを取り出すとその場で開けて、 「うまい」 と言って戻ってきた。 私は目で蓮を追う。 蓮は私の隣に座ってテレビのリモコンを取って電源を入れた。 「飯は食ったから」 「あっ、うん」 横目で蓮を見るとテレビを見て笑っていて、いつもと変わらない蓮だった。 「よし、風呂入るよ」 蓮にそう言われても私が深刻にずっと考えているもんだから蓮は痺れを切らしてか、 「聞いてないなら無理矢理連れていく」 って私を軽々抱き上げてしまった。 「一人で歩けるよ」 そう言ってるのにお構いなしに歩く。 「いつまでもボッーとしてるからだよ」 だって……蓮と桐谷課長のことが気になって仕方がないの。
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