22章

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肩が凝ったのか首をグルグル回しながら梨花が言った。 「今日は桐谷課長の歓迎会だね」 「あっー!」 そうだった。私ったら今日が桐谷課長の歓迎会だったことすっかり忘れていた。 蓮も忘れていたのか今朝は何も言わなかった。 呆れた梨花が苦笑いして、 「まさか忘れてたとか?」 「うん……忘れてた」 確か月曜日に幹事の女の子から歓迎会のこと言われて、ちゃんとわかったよって返事をしてたのに…… あれ?私今日何着てきたっけ?腕を組ながら何を着てきたか思い出してみる。 ああ、花柄のワンピース。 これなら歓迎会でもなんとかなりそう。 「井上さんちょっといい?」 「はい」 私の通路を挟んで横のデスクにいる桐谷課長に呼ばれて、私はパソコンのキーボードから指を離した。 桐谷課長が来て一週間以上経ったけど何もなく、私は補助として桐谷課長の傍で仕事をしていた。 「この資料欲しいんだけど……どこにあるかわかる?」 桐谷課長が書類に指差す文字を見て、 「これは……」 私はすぐわかり、 「この資料なら資料室にありますよ」 「資料室にあったのか。だからオフィスの棚見てもないんだな」 なんて頭を掻きながら桐谷課長は笑っている。 私も入社した頃はオフィスの棚ばかり探していた。 「これ探したいんだけど一緒に資料室に来てくれる?」 一瞬、えっ、と目を見開いて驚いた顔をしてしまって…… まずいと思いつつ…… 桐谷課長へ視線を恐る恐る移動させると、 「今から行けるか?」 と、私が驚いたことに気付かなかったのか、それとも敢えて聞かないのか…… 清々しい顔の桐谷課長の後ろを歩きオフィスを後にした。 それを蓮は不安な表情で私達の歩く姿を見ていた。
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