22章

3/10
前へ
/549ページ
次へ
最近来ていなかった資料室はいつも通り湿気っぽく、そして書類の独特な臭いが鼻を擽る。 入ってすぐに電気を付けて私はこちらです、と案内すると 「資料室初めて入ったよ」 桐谷課長はキョロキョロと周りを見渡し、過去の資料を一冊取り出すとペラペラと捲ってまた元の位置に戻した。 「桐谷課長ありましたよ」 私はもう見つけ出し、それを桐谷課長に渡すと 「おっ、これこれ」 と受け取った書類をじっくり見ている。 私はこの湿った空気が嫌で窓を開けた。 外は快晴で真っ青な空に綿菓子みたいな雲が所々に浮いていて、あまりにも気持ち良い空気に肺いっぱいに息を吸う。 いつの間にか隣に来ていた桐谷課長が 「毎日オフィスにいると外の天気わかんないよな」 桐谷課長は眩しいのか両目を細めながら窓枠に体を預け寄り掛かった。 「そうですよね。たまにこうやって息抜きしたいですよね」 心地好い風が私の髪をいたずらして……顔に掛かった髪の毛を耳に掛けた。 「井上さんは今日の歓迎会参加してくれるの?」 「あ、はい」 「そっか」 そう言った桐谷課長は二度ほど頷き私から目を逸らしどこか遠く見つめながら、 「よしオフィスに戻ろう」 と、踵を返して先に歩いて行く。 桐谷課長の雰囲気がやっぱり私の中で黒い人物だと警報を鳴らしていて…… 後ろ姿を私は立ち止まったまま見ていると桐谷課長が振り向いて、 「電気消すぞ」 「あ、はい」 入口で桐谷課長がドアを押さえて私が来るのを待っててくれたので、私は小走りで向かった。
/549ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23659人が本棚に入れています
本棚に追加