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「美優!こっちだよ」
上半身を目一杯伸ばし、手を上げて大きな声で叫ぶ梨花。
もお、そんなに大きな声を出さなくても聞こえるのに。
梨花の所まで歩きながら蓮を探せば梨花と同じテーブルにいて……
蓮の広い背中を視界に入れ、振り向いてと願うけど……
願いは届かず振り向いてくれることなく……梨花の所に着いてしまった。
私がテーブルの前に行くと梨花が一つ席をずれて、
「美優はここ」
と、蓮の真向かいに座らされる。
嬉しいけどさっきのことがあって、怒っている蓮の真っ正面はちょっときつい。
蓮は私が目の前にいてもまったく見ることがなく、私は見てほしくてさっきから視線を送っているのに……
携帯を見てたり、隣の人としゃべったりしている。
「ここ座っていい?」
と、なぜか桐谷課長が私の横にきて……
私の返事も聞かないうちに桐谷課長は座っていて。
この状況で隣に座るのはまずいんじゃ……
そう思ってまた蓮をちらっと見ても、まるで蓮の視野には私が映っていない感じで。
わざと倒れたんじゃないし、あの時何かあった訳じゃない。
逆に助けてもらったお陰で怪我をしなくて済んだ。
それだけなのに蓮は怒っていて……
居心地の悪いこの空気にため息を付いて、置いてあったおしぼりで手を拭くと、
「どこも怪我してなかった?」
桐谷課長がまたさっきのことを掘り出してしまい、私は苦笑いをするしかなかった。
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