23章

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「どうしよう……」 メモを両手で掴んだまま私は動けず桐谷課長の文字を見ていた。 仕事の話…… それってここでは話せないことなのかな? とても大事な話なら会議室とか資料室とかそういう所では無理なんだろうか。 しかもしっーって言われたけどあれはバレちゃだめってことだよね? そんなに大事なことってなんだろう…… もしかしたら…… 蓮のこと? やっぱり桐谷課長に蓮とのことバレてる? 考えても考えてもやっぱり桐谷課長のこの行動はなんなのかわからなくて…… でもきちんと断ろう。桐谷課長と二人きりで食事だなんて絶対行っちゃいけない。 上司の誘いでも桐谷課長とだけはだめなの。 とりあえず蓮に連絡したいけど……得意先だから電話には出れないはず。 だからメールしてみよう。 私はメモ用紙を制服のポケットに押し込んで、パソコンの画面に集中した。 昼食後、更衣室に寄った私はパイプ椅子に腰掛けバックから携帯を取り出した。 蓮のアドレスを探して新規作成からメールを打つ。 すぐに見て返してくれればいいけど…… 多分無理かな。 私はポケットに手を入れて桐谷課長からのメモを読み返した。 「……困ったな」 蓮がいない時に限っての誘いで。 でもそれって蓮がいないから…… まさかそんな…… 桐谷課長を疑いたくないけど……悪い方へと考えてしまう。 蓮、メールに気付いて。早く会社に戻って来て。 刻々と迫る時刻。 定時まであと4時間だった。
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