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「こっちに座ったら?」
私は部屋のドアの前で動けず立ち竦んでいた。
これ以上入ってしまったら……
脳はすでに警報の赤いランプが回っていて危険だと訴えている。
梨花に電話をしてまだ15分ぐらいしか経っていない。
これからどうやって時間を稼ぐかこの緊迫の中考える。
「井上さん何飲む?ビールあるぞ?」
「ビール飲みたいです」
今は……私が酔わない程度に飲んで……
桐谷課長を酔わせることは難しいけど少しでもお酒を飲ませて、そしてそれから……
気だけ焦ってその先を考えることができないけど……
まず梨花が来るまで時間を潰したい。
「そこ座って」
「はい」
一人掛けのソファが二つあって、すでに座っている桐谷課長の向かいに座った。
缶ビールを受け取りプルタブを開けて一口喉に流し込む。
桐谷課長はスーツの上着を脱ぎ捨て、ネクタイに手を掛け外したネクタイをベッドに放り投げる。
そんな桐谷課長を一部始終見ていると急に立ち上がって私の真っ正面に来て……
顎を桐谷課長の指先に掴まれて顔を持ち上げられた。
「そんなに俺が気になるのかよ」
鼻先が触れそうな所で桐谷課長の顔が止まり、
「さっきから怯えた顔してる」
と、桐谷課長は片頬だけ上げてあざ笑う。
梨花……
もう無理かも。
私……
桐谷課長に抱かれてしまう……
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