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「美優!」
「れ……ん……」
ドアを開けて入って来たのは会いたくて触れたくて、何度も心の中で名前を呼んだ愛しい蓮だった。
「ど……して……ここに……」
唖然として立ち尽くす桐谷課長を横切り走ってきた蓮は、私を抱き締めすっぼり包んだ。
「美優……」
張り詰めていた糸がプツンと切れた私は顔をぐちゃぐちゃにして蓮の胸で声を出して泣いている。
「遅くなってごめん」
眉を下げてそう言った蓮は泣く私の頭を優しく撫でてくれて……
「何もされなかった?」
と言われて、桐谷課長にキスされたことを思い出した私の体がビクッと震える。
それを蓮は見逃さず、肩を掴まれた私は蓮から離されて……
私の頭をポンポンと叩くと優しく笑って立ち上がり、桐谷課長が立つドアの前へ向かって行った。
「お前、美優に何をした」
「……」
低く響く蓮の声音は聞いてる私でも怖いと感じるほど冷たい声……
何も答えない桐谷課長の胸元を蓮は掴んで、
「桐谷、美優に何をした!」
「お前を潰すために利用したんだよ」
さっき見せた弱気な桐谷課長はもういなくて……
蓮を挑発するかのように片頬を上げて桐谷課長はあざ笑う。
「俺に恨みがあるなら美優は関係ないだろ」
と怒声を張り上げて……
あっ!っと思った時にはすでに遅く……
蓮の握った拳は桐谷課長の頬を殴っていた。
桐谷課長はドアに寄り掛かりズルズルと壁を蔦って座り込み、流血している血を拭り、フッと鼻で笑って蓮を睨んだ。
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