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「俺が傷付くのは構わない。でも美優が傷付いた時は相手が誰だろうと絶対許さない」
力強く、真っ直ぐ桐谷課長に向かって言った言葉にギュッと心臓が収縮したかのように痛い。
こんな時なのに蓮が発する言葉一つ一つに私の心臓は反応する。
蓮はきっと私に何かあるたび全力で守ってくれる。
自分が傷を負ってもどんなに苦しくても私を誰よりも何よりも一番に考えてくれて……
そして優しく抱き締めてくれる。
蓮の……私を愛してくれる想いが……私に伝わる。
「桐谷。二度と美優に手を出すな」
隣に立つ蓮が私の肩に置いてあった手に力を入れた。
「もう手を出したって言ったら?」
威圧的な態度でまたも蓮に食いつく。
「桐谷、お前!」
「蓮やめて!」
もう……やめて……
蓮が桐谷課長にまた殴り掛かろうとして私は蓮の前に飛び出した。
そして胸元を押さえて、
「お願い……もう……やめて」
握った拳を蓮は下ろし……私はもう殴っちゃいけない、そんな思いで蓮の手を握った。
「桐谷……そんなに俺が憎いか?」
「……」
桐谷課長は黙ったまま視線はどこか遠くを見つめていて……
「俺が海外赴任を断ったためにお前が行くことになって、お前がいない間俺は昇格していた。……それが悔しくて美優を利用して俺を落とし入れるつもりだったのか?それがお前の復讐か?」
「っ!」
桐谷課長は悔しそうに唇を結んで……そして、
「神堂のせいで俺の人生はすべて狂ったんだ!」
と、怒りを露にして桐谷課長は叫んだ。
二人の間にこんなことがあったなんて……
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