25章

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「ねえ、蓮?」 「……」 「ねぇ、蓮ってば」 「あともうちょっと待って」 さっきから蓮はずっと仕事をしていて…… 最初は大人しくソファに座って雑誌を読んでいたんだけど。 全部見終わっちゃって。 暇になった私は隣で仕事をする蓮の横にくっつき黙ってパソコンを見ていた。 でもかれこれ2時間こんな状態で、さすがの私も飽きてきちゃって…… 多分蓮は……私の存在を忘れてる。 堪えられなくなった私は自分の部屋に行きドアを開ければ…… 「……」 足の踏み場もない状態。 自分でやっておきながら唖然としてしまう。 これだけ散らかっているとどこから手を付けていいのか。 「うーん」 仁王立ちして腕を組んだ私は部屋の入り口で辺りを見渡す。 それにしてもいつからこんな状態なのか…… 蓮に見つかったら間違いなく怒られる。いや、怒られるじゃ済まない。 私はぐちゃぐちゃに散らばった服をかき集め、一つの山にした。 出勤前の忙しさの中、クローゼットから何枚も出しているうちにこんなに溜まってしまっていた。 一枚一枚丁寧に畳んでいくと埋もれた中から探していたグロスやらネックレス、そして、 「あー、これ探してたんだよね」 フローリングが見えて底から出てきたのは……ずっと探していた片方の小さなピアス。 「これでやっと両耳にできるよ」 去年の誕生日に梨花が美優に似合いそうだったから、と言ってくれたプレゼントだった。 いろんな探し物がたくさん出てきて、しまいには途中まで読んでた雑誌を見つけ寝転んで読んだりして。 でもゴロゴロしているうちにあくびが出てきて瞼が一気に重くなる。 寝るつもりはないのに脳はすでに睡眠体制に入ってて…… 私はあっという間に睡魔に襲われ深い眠りについていった。 やばい。 美優を忘れてた…… と思い、横を見ればさっきまで座っていたはずの美優の姿が消えている。 足元にも俺の後ろにもどこにも美優はいない。 仕事に集中しすぎて、すっかり俺は美優のことを忘れてしまってた。
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