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寝室にもいない。風呂場にもいない。キッチンにもいない。
ということは……
残るは美優の部屋だ。
リビングを出て玄関の手前に美優の部屋がある。
俺は美優の部屋を覗こうとドアを開ければ……
「ククッ」
思わず美優の姿に笑ってしまった。
散らばる部屋に埋もれ丸く縮こまって気持ち良さそうに寝息を立てて眠っていた。
でもそれが可愛いと思ってしまう俺もバカで。
眠る美優の横に座って長い髪を耳に掛けてもビクともしない。
「美優、風邪引く」
この眠りは俺の声なんて聞こえてないよな。
かまってもらえなくて暇になってここに来たんだろ。
「相変わらずだな」
美優の部屋に最近入っていなかったけど、まさかここまで汚いとはな。
あの朝の騒がしさならこうなる。
毎日、毎日、一人で走り回って、リビングとこの部屋を何度も行き来するのを俺は笑いを堪えながらいつも見てる。
たまに煽らせば半べそになって慌てて。
そんな毎日だけどこの先、美優がいない生活なんてもう考えられない。
そのぐらい美優の存在は俺に染み込んでいる。
「ん……」
寝返りを打って動いた美優はやっぱり寒いのか更に小さくなって体を縮めた。
ベットに連れて行きたいとこだけど……
気持ち良さそうだし、抱えたら多分目を覚まよな。
俺は散らかってる中から、今は夏なのになぜかあるコートを引っ張り美優の体に掛けて……
「俺も寝よう」
そっと美優の首の下に手を忍ばせて、腕に頭を乗せると美優を引き寄せ抱き締めた。
嗅ぎなれた優しい美優の香りがふわっと漂う。
それが俺には安心できて、ぐっすり眠ってしまっていた。
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