25章

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どんなに大切にされても、どんなに愛されても、たまに不安になることはあって…… 当たり前のように蓮がいても大丈夫って自信がある訳じゃない。 「蓮は私といて幸せ?」 バかな質問だと蓮は笑うかもしれないけど…… どこかで確認しないと自分の自信のなさと不安に押し潰されそうになる。 でもそんな気持ちは蓮の満面な笑みで打ち消された。 「俺はすっごく幸せだよ」 蓮の手が伸びてきて私の頬を挟む。眠っていたせいなのか蓮の掌が暖かい。 「美優は?」 「私?」 「美優は幸せ?」 茶色の澄んだ瞳が私を捕らえるからちょっと恥ずかしくって頬を赤く染める。 「私もすっごく幸せ」 「俺の真似してる。美優もすっごくって言った」 「だって私もそう思うんだもん」 「真似するな」 蓮は私の頬を強く挟むから私の口が尖ってしゃべりにくくなり、 「れぇん……いだいっでば」 プハッと吹き出して蓮は目尻を下げてケラケラ笑う。 あっ、この笑った顔、私は好きだな。 「美優ブサイク」 こんな悪ふざけをする蓮も、こうやって目尻を下げて笑う蓮も知っているのは私だけ。 この蓮の笑顔を絶やさないように……私も隣でずっと笑っていたい。 「れぇん、はやぐはなじでよ」 「それどこの国の言葉だよ」 「だがらはやぐ」 チュッ 私の尖った唇に蓮がリップ音を鳴らして軽いキスをして、 「こういうのが幸せっていうんだよな」 蓮のこの一言で見事に心臓は撃ち抜かれて、嬉しくてジリジリと胸が熱くなる。 「蓮……」 私の好きが溢れてしまってそれが涙として流れてく。 頬から離れた手は私の顎を掴み、蓮が近寄よってくる…… ゆっくり目を閉じれば蓮の温かい唇がそっと触れて私の唇と重なった。 美優が不安になったら抱き締めるし、欲しい言葉があるなら何度でも言ってやる。 それで美優が安心して笑っていられるなら…… 俺は美優がいるから幸せなんだと…… 嫌と言うほど言ってやるよ。
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