25章

9/16
前へ
/549ページ
次へ
車で40分ぐらい走った頃、閑静な住宅街に入って来ていた。 こんな所にイタリアンのお店があるの?っていうぐらい周りは静かで。 でも目の前には一際目立つ建物があって、緑と白と赤の縦縞の国旗が揚げられていた。 「ここだよ」 「ここ?」 「そう」 「こんな住宅街にあるなんてびっくりだね」 私がそう言うとフッと笑って、蓮がエンジンを止めた。 「行こうか」 「うん」 駐車場に車を止めた私達は店に入っていった。 ピザを焼いているのかな…… チーズの香ばしい匂いがつーんと香り、ロッジのような内装はどこか懐かしいような雰囲気。 「よっ、蓮」 奥からきりっとした眉に少しつり目の男の人がやってきて声を掛けてきた。 「久しぶり」 と蓮が言えば、 「久しぶりってもんじゃないだろう。ちょっと来ないと思えば……」 蓮に隠れるように立っていた私に気付いたその人は、 「へー、そういうことかよ」 私はちょっと緊張しながら、 「はじめまして、井上美優です」 と言うと、私の方へ歩いてきて、 「美優ちゃんって言うんだ?俺ね、康介。若林康介っていうのよろしくね」 と手を出され、私も手を出して握手をした。 「はい、こちらこそよろしくお願いします」 「おい、蓮。お前いつの間にこんなかわいい子見つけたんだよ」 康介さんはニヤニヤ笑って肘で蓮をツンツンと突っつき、そんな康介さんに、 「康介うるさい。はあ……連れて来るべきじゃなかったかも」 「久しぶりにあった奴に言う言葉かよ」 親しそうにしゃべるこの人は蓮とどういう関係?
/549ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23659人が本棚に入れています
本棚に追加