25章

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「あ、まずはこっちに座りなよ」 案内された席に蓮と向かい合わせに座ると、康介さんは蓮の横に座って、持ってきた水をテーブルに置いた。 「康介仕事したら?」 「そうやって久しぶりに会った俺を蓮は邪魔者にするのかよ」 私は黙ったまま二人の会話を見ていると、蓮がそんな私に気付いて、 「康介は高校の時のバスケ仲間。今はここの店のオーナー」 「おいオーナーだけじゃないってシェフもやってるって」 康介さんってシェフとオーナー両方を…… 蓮とも松田さんともまた違う感じで、どちらかというと康介さんは軽いノリでしゃべりやすい人柄だ。 バスケ仲間か……蓮がバスケしてたって初めて聞いたかも。 「あ、こいつね、キャプテンやってて、スリーポイントの蓮って言われてたの。そりゃあもうモテモテでさ」 「康介早く戻ったら?」 蓮の鋭い目が康介さんを睨むけど康介さんのおしゃべりは止まらない。 蓮がキャプテンか…… 一度でいいから見てみたかったな。 格好良かっただろうな…… 「美優」 ユニフォーム姿なんて見たらきっと私、クラクラしちゃうかも。 「美優」 「は、はいっ」 「また妄想?」 初めて会った人の前でまたしても悪い癖が…… 「美優ちゃん妄想すんの?ねぇ、ねぇ今の妄想って俺のこと?俺のことだよね?」 体を前に出してきて、俺?俺?と康介さんは自分に指を指してて。 私がクスッと笑うと、 「康介の妄想なんてしないって。美優は俺の妄想してんの」 「うわっー何こいつ。美優ちゃんこんな奴やめて俺に乗り替えない?俺すんげぇ優しいよ」 こういう時の反応ってどうしたらいいかと考えていると、それを蓮が阻止してくれて、 「美優は俺以外興味持たないから、康介じゃ無理」 私は顔を赤くするほどこんなに恥ずかしいのに、人前でもサラッと言える蓮って無意識に言ってるんだよね…… ほら康介さんも苦笑いしてる。 「俺まで恥ずかしくなるわ」 「……私もです」 当の本人はすでにメニュー表を見ていて…… 「蓮がここに女の子連れて来たのは初めてなんだよね」 と、康介さんは私にニコッと笑ってウインクをした。
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